尿路感染症、膀胱尿管逆流症
Urinary tract infection, vesicoureteral reflux
尿路感染症とは
尿路感染症は腎臓-尿管-膀胱-尿道までの尿路の細菌感染症の総称。膀胱炎では発熱はないが、腎盂腎炎、急性巣状細菌性腎炎、腎膿瘍では高熱を認め有熱性(上部)尿路感染症といいます。
発熱を認める乳児の5%が有熱性尿路感染症です。1歳未満は亀頭包皮内の恥垢による感染から男児が多く、1歳以降は肛門と尿道口の距離が短い女児に多いです。
尿路感染症の症状
発熱(かぜ症状を伴わない)、背部痛、嘔吐、不機嫌、哺乳不良
尿路感染症の原因
起炎菌の多くは腸内細菌です。大腸菌が8割を占め、他に腸球菌、クレブシエラ、プロテウス、緑膿菌などがあります。
尿路感染症の検査
1.尿検査:膀胱から尿を採取します。尿中白血球増加(膿尿)。亜硝酸塩増加。
2.尿培養:大腸菌、腸球菌などの起炎菌が基準値以上に検出(細菌尿)されれば確定診断。
3.血液検査:白血球、炎症反応(CRP)上昇。
4.腹部超音波:腎盂壁肥厚があれば腎盂腎炎と確定診断。便秘や先天性腎尿路異常、膀胱尿管逆流の有無を調べます。
5.腹部造影CT:腎膿瘍、急性巣状細菌性腎炎の診断、病変部の同定に行います。
6.逆行性排尿時膀胱尿道造影:尿道口からビニールチューブを挿入し膀胱に造影剤を注入。排尿時の膀胱尿管逆流の評価、先天性腎尿路奇形の有無を調べます。
7.DMSA腎静態シンチグラフィ:放射性同位元素(RI)を注射し、2時間後に約30分間撮影します。逆流性腎症・腎瘢痕の病変範囲を調べます。
尿路感染症の治療
1.抗菌薬:有熱性尿路感染症では入院の上、セフェム系抗菌薬またはペニシリン系抗菌薬の点滴で治療します。腎盂腎炎は点滴+内服薬を2週間、急性巣状細菌性腎炎は点滴2週間+内服薬1週間、腎膿瘍は外科的処置+点滴4週間の投与を行います。
膀胱尿管逆流とは
〔概念〕解剖学的あるいは機能的な異常が原因で、尿管膀胱移行部の逆流防止機構が未熟もしくは破綻した結果、膀胱内に貯まった尿が尿管から腎盂腎杯や腎実質内に逆流する現象。
〔原因〕原発性膀胱尿管逆流は、生まれつき膀胱壁内を貫通する尿管の長さが短い尿管膀胱移行部形成異常によります。
二次性膀胱尿管逆流は、後部尿道弁などの先天性腎尿路異常や便秘など排尿排便障害が原因となります。
〔合併症・予後〕膀胱尿管逆流により腎盂腎炎を繰り返すと腎実質が障害され瘢痕化していく逆流性腎症をきたし、思春期以降に蛋白尿、高血圧、腎機能障害を呈するとされます。
〔治療〕軽症で自然治癒が期待できる年齢には抗菌薬予防投与、重度で早期治療が必要な場合や自然治癒が期待できない場合は、外科的治療(逆流防止術)を行います。
先生からのひとこと
有熱性尿路感染症は小児の細菌感染の中で頻度が高い病気です。せきや鼻水もないのに高熱が続く場合は本疾患を疑います。また膀胱尿管逆流を繰り返すと将来的に高血圧・腎機能低下をきたすため、早期発見、早期治療が必要です。オムツ交換の頻度は発症に関与しないので頻回にオムツを替える必要はないです。また女児の場合は陰部を清拭するときは「前→後ろ(外陰部→肛門)」の方向へ拭くようにしましょう。