非アルコール性脂肪肝疾患
Nonalcoholic fatty liver disease (NAFLD)
非アルコール性脂肪肝疾患とは
アルコールの摂取歴がないにもかかわらず肝細胞に中性脂肪が沈着して肝障害をきたす病気。進行することがまれな非アルコール性脂肪肝(NAFL)と進行性で肝硬変や肝細胞癌を引き起こす非アルコール性脂肪肝炎(NASH)があります。
小児のNAFLDは男児に多く、有病率は3%で年齢が高くなるにつれて増加します。
非アルコール性脂肪肝疾患の症状
無症状、肥満、腹囲増加、高血圧、脂質異常、耐糖能異常
非アルコール性脂肪肝疾患の原因
NAFLDはその多くが肥満やメタボリックシンドローム、2型糖尿病などのインスリン抵抗性により引き起こされます。
メタボリックシンドロームの肝臓での表現型といわれています。
非アルコール性脂肪肝疾患の検査
1.血液検査:肝障害(AST,ALT上昇)、血小板低下、線維化マーカー(Ⅳ型コラーゲン,P-Ⅲ-P)上昇、フェリチン上昇、インスリン上昇、コレステロール・中性脂肪上昇
2.腹部超音波:脂肪肝、肝臓の硬さ、他の肝疾患の有無を調べる。
3.腹部CT:脂肪肝、内臓脂肪量の評価
4.肝生検:右脇腹の肋間から針で肝臓から組織を採って顕微鏡で評価する。NASHの鑑別診断には肝生検が必要。
非アルコール性脂肪肝疾患の治療
体重の減量が重要で、それだけで改善することがあります。
1.食事運動療法:低脂肪・低糖質食。間食は控える。年齢毎の1日に必要な適切な摂取カロリー量を維持。偏食をなくし食物繊維も適度に摂る。汗ばみ息がはずむ程度の有酸素運動を1日30~60分間以上行う。急速な減量はリバウンドをきたすため、毎月1~2kg以内の減量スピードが望ましい。
2.生活習慣の改善:朝食は必ず摂取し、夕食の量を減らす。スクリーンタイム(電子機器の使用時間)を1日2時間未満に抑える。睡眠時間を8時間以上とる。毎日、1日の体重変化をグラフに記録し視覚的に意識する。
3.薬物療法
⑴ビタミンE(ユベラ®):脂質の連鎖的酸化を阻止
⑵糖尿病治療薬〔チアゾリジン誘導体〕(アクトス®):インスリン抵抗性を改善
⑶脂質異常症治療薬〔HMG-CoA還元酵素阻害薬〕(リピトール®)
⑷降圧薬〔アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬〕(ディオバン®)
先生からのひとこと
飽食の時代である現代において、肥満症、メタボリックシンドロームに伴う肝障害です。「肥満は太っているだけで無症状だから健康」というのは迷信であり、約1割の人は将来的に脂肪肝炎から肝細胞癌へと進行し、大人の肝臓病死の主な原因となりつつあります。わが子が大人になって不幸な転帰をとらないように、親が理解して子どものうちに早期介入し、病状進行を阻止しましょう。