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呼吸器疾患

                           症状名
クループ症候群 Croup syndrome

クループ症候群とは

クループ症候群は、生後6ヵ月~3歳の乳幼児に多い疾患で、晩秋から冬季に好発します。のどの奥(喉頭)がウイルス感染によって腫れることで気道が閉塞するかぜです。

一般的に多いのは、のどと気管に炎症を起こす急性喉頭気管炎です。まれに気管へ食物が入らないように防いでいる喉頭蓋に炎症を起こすと(急性喉頭蓋炎)、急速に進行し重篤になることがあります。

クループ症候群の症状

特徴的な3大症状は以下のような上気道狭窄症状です。

  1. 声がかれる
  2. オットセイの鳴き声のような乾いたせき
  3. 息を吸ったときにのどから「ヒィーッ!」という高い音が鳴る

他、発熱、鼻汁、鼻閉、呼吸苦、下あごを突き出してよだれを流す(においをかぐような姿勢;sniffing position)など。

クループ症候群の原因

主な原因はウイルス感染症によるもので、パラインフルエンザウイルス、コロナウイルス(HCoV-NL63)、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、ライノウイルスなどが多い。

クループ症候群の検査

クループ症候群は上記の3大症状で診断するため特別な検査はありません。

1.頸部側面軟線X線(レントゲン)

首を横から撮影し、急性喉頭蓋炎による気道閉塞を調べます。

クループ症候群 レントゲン

2.頸部~胸部X線(レントゲン)

肺炎の合併を調べます。また首の部分に鉛筆の先のような喉頭声門下狭窄像(ペンシルサイン)を認めることがあります。

クループ症候群 レントゲン

3.血液検査

炎症反応(CRP)に上昇を確認することで、細菌感染の有無を調べます。

4.迅速検査

インフルエンザウイルス、アデノウイルスなどの病原微生物を調べます。

クループ症候群の治療について~リンデロンシロップ単回投与、ボスミン吸入~

クループ症候群

新型コロナウイルス感染症オミクロン株流行以降はクループ症候群を合併する子どもが増加し、一部では気管内挿管・人口呼吸を必要とする重症例も報告されています。夜中突然にわが子がノドの痛そうな激しい咳が出だして止まらなくなり、あわてて夜間救急診療所を受診することの多いクループ症候群。わけがわからず言われるがままに吸入を受け、出されたお薬を飲ませている親御さんが多いのではないでしょうか。どのような治療法があり、どのような効果があるのか、皆さんはご存じですか?

ここでは、クループ症候群の治療について詳しくみていきましょう。

1.クループ症候群の重症度評価

一般的には、軽症例がほとんどですが、中等症以上の場合は十分な薬物治療、細やかな身体管理、場合によっては入院治療が必要です。
重症度の評価法として、クループスコアや気道閉塞評価スコアが用いられます。観察のポイントとしては、意識状態、喘鳴(ゼェゼェ)、呼吸状態(努力性呼吸:肩を上下させる、あばら骨が浮き出るような呼吸、お腹をペコペコさせて呼吸)、呼吸数、心拍数が重要です。

クループスコア

1)軽症

①意識ははっきりしている
②安静時ではゼェゼェしていない
③上記の肩やお腹をペコペコさせるような努力性呼吸がない
④心拍数が幼児で1分間に110回前後
⑤食事・会話が普通にできるようであれば慌てる必要はありません。

2)中等症以上

①ぐったりしている
②安静時もゼェゼェしている
③努力性呼吸がある
④心拍数が幼児で1分間に130回以上
⑤食欲がなく会話も息が絶え絶えであれば速やかにかかりつけ医または夜間休日診療所へ受診しましょう。

クループの重症度評価

2.クループ症候群の薬物治療

治療に用いる薬剤はステロイド薬(リンデロンシロップ)とアドレナリン吸入(ボスミン吸入液)の2本柱になります。

ステロイド薬(リンデロンシロップ)

リンデロンシップ

リンデロンシロップ〔1.5mL/kg 例) 体重10kgの子で1回15mL〕単回経口投与が行われます。効果発現は投与後4~6時間とされており即効性はありません。症状再燃に伴う再受診率、アドレナリン吸入回数、病院内滞在時間、入院率に有意な改善が示されています。すなわち、病気の期間を短くし、重症化を抑制できる薬といえます。欧米ではすべてのクループ症候群の児に推奨される治療とされています。単回投与のため副作用はほとんどありません。反復投与が必要な場合は入院治療が必要となります。

但し服用量が結構多いためなかなか飲めない、途中で吐いてしまう子もいます。根気よく時間をかけて少しずつ飲むか、①デカドロン錠(1錠0.5mg)3錠を粉砕して単シロップ5mLに混ぜたもの、またはプレドニゾロン散/錠1~2mg/kgに替えてもらうとよいでしょう。

アドレナリン[エピネフリン]吸入(ボスミン吸入液)

アドレナリン[エピネフリン]吸入(ボスミン吸入液

わが国で軽症例から最も頻用される治療薬で、ボスミン吸入液0.1~0.3mLを生理食塩液2mLに混ぜてネブライザー吸入します。効果発現は10~30分以内とされており即効性があり、2時間は効果が持続します。喉頭粘膜の腫れを軽減し気道狭窄による呼吸困難を改善します。重症例には気管内挿管による人工呼吸を回避する手段として位置づけられています。1回使用量が3mL(わが国の使用量の10倍量)を超えると頻脈や顔面蒼白などの副作用の頻度が高くなります。1時間に3回吸入を行った患者では心室性頻拍と心筋梗塞を合併した報告例があります。

その他の治療法

①鎮咳薬(咳止め)・去痰剤(痰切り)・気管支拡張薬など

エビデンスがなく適応がないと考えられていますが、実際の現場では頻回に咳が出るため一緒に処方されることが多いです。

➁漢方薬

★五虎湯(炎症を鎮めたり、気管支のけいれんを緩和する作用があり。顔を赤くして咳き込むような激しい咳や気管支炎を改善します)
★麦門冬湯(粘膜や気道を潤し、水分や飴などでは潤しにくい気管支まで潤します。痰の少ない乾いた激しい咳や長引く咳を改善します)

③解熱鎮痛薬

安静を維持するために時に有用な場合があります。

④抗菌薬

細菌感染が疑われる場合にのみ使用されます。

⑤酸素投与

低酸素血症を認める場合には必要となります。

⑥加湿・冷気吸入

有効性が証明できず、推奨されない傾向にあります。

家庭内での療養のポイント

家庭内での療養

〇お子さんを楽な姿勢にするか、抱っこして落ち着かせて泣かせないようにしましょう。大声で泣くことはノドの痛みや咳、呼吸苦を悪化させる原因になります。
飲み物を少しずつ飲ませ、のどを潤し、痰の粘調さをやわらげ、脱水にならないようにしましょう。
上半身を起こすと咳がおさまることもあります。
〇子どもの近くでたばこを吸っている人がいないよう気をつけましょう。

以下のような場合はすみやかに医療機関を受診しましょう。

  •  呼吸がはやい
  •  呼吸をするときに首のまわりや肋骨と肋骨の間がくぼむ
  •  落ち着きがない、ぐったりしている、顔色が青ざめている
  •  物を飲み込めない、よだれをたらしてあごを突き出す姿勢をしている

まとめ

〇医療機関で行うアドレナリン吸入は即効性があるが効果は一時的。
〇ステロイド薬には即効性はないが病気の期間を短くし、重症化を防ぐことができる。
〇お子さんを泣かせないようにし、水分をこまめにとらせましょう。
〇呼吸が苦しそう、顔色が悪い、水分が飲めない、よだれをたらして喘いでいる場合は危険なサイン!すみやかに医療機関を受診しましょう。

                           宮崎先生よりひとこと

先生からのひとこと

乳幼児によくみられるのどの奥が腫れるかぜです。夜間、突然に変な声の咳(犬吠様咳嗽)が出して止まらなくなりあわてて救急診療所を受診することが多いです。
2-4日間で改善することが多いですが、喉頭蓋炎は急速に進行し窒息死するリスクがあります。
クループ症状に加え、首を後ろに反りあごを突き出してよだれが流れ出るような呼吸困難(sniffing position)があれば速やかに救急車を要請しましょう。