新型コロナウイルス感染症
Coronavirus disease 2019(COVID-19) infection
新型コロナウイルス感染症とは
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2019年12月に中国湖北省武漢市において初めて確認され、世界へ急速に拡散しパンデミック(世界的な大流行)をもたらしました。
飛沫感染や接触感染により高齢者や成人を中心に感染し、肺炎の重症化から急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の状態となり死亡します。
世界で2億2千万人以上の感染者、460万人以上の死亡者を認めました(2021年9月の時点で)。
世界中の人の生活や社会・経済に大きな影響を与えました。
新型コロナウイルス感染症の症状
潜伏期間は1~14日間。発症の2日前~発症後10日間は感染性を有します。
発熱、咽頭痛、咳嗽、鼻汁などの呼吸器症状。全身倦怠感。嘔気、下痢などの消化器症状。味覚・嗅覚障害。呼吸不全。
こどもの場合は、8割以上が無症状~軽症の呼吸器症状で経過することが多く、日本で小児の死亡例はほとんどありません。
5%未満の割合で新生児や基礎疾患のある児は重篤化することがあります。
新型コロナウイルス感染症の合併症
小児多系統炎症症候群(MIS-C):学童を中心に発熱・発疹・眼球結膜充血などの川崎病様症状を呈し多臓器に炎症と傷害を起こす。
新型コロナウイルス感染症の原因
新型コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型;SARS-CoV-2)による飛沫・接触感染が原因です。
感染源はほとんどの場合、保護者や同居家族による家庭内感染です。学校や保育園等における小児の大規模な集団感染事例はほとんど報告されていません。
こどもは新型コロナウイルスが人の細胞内に侵入するためのアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体の発現が少ないため感染しにくいとされています。
こどもは
- 大人に比べて基礎疾患が少ない
- 普段から感冒コロナウイルスに感染しており、新型コロナウイルスにも交叉免疫がある
- BCG接種を通じて自然免疫が強化されている
- 高齢者は免疫低下により新たな抗原へ反応できない
- 感染初期の小児の自然免疫力が成人より優れている
等の理由から成人に比べて重症化しにくいと考えられています。
新型コロナウイルス感染症の検査
1.微生物学的検査
(1)抗原検査:綿棒で鼻咽頭ぬぐい液を採取し検査。検査にかかる時間:約30分。PCR検査に比べて感度は低い。
(2)RT-PCR検査:唾液または鼻咽頭ぬぐい液で検査。検査にかかる時間:4~9時間。感度が高く信憑性が高い。
2.胸部X線、胸部CT
肺炎の有無を確認するために行います。
新型コロナウイルス感染症の治療(2021年12月の時点で)
1.人工呼吸治療
人工呼吸器、体外式膜型人工肺(ECMO)
2.血液浄化療法
炎症に関与する物質をフィルターで取り除く
3.薬物療法
(1)レムデシビル(RNA合成酵素阻害薬)
(2)デキサメタゾン(ステロイド薬)
(3)バリシチニブ(ヤヌスキナーゼ阻害剤)
(4)トシリズマブ(ヒト化抗IL-6受容体モノクローナル抗体)
(5)ファビピラビル(RNA合成酵素阻害薬)
(6)ロナプリーブ(抗体カクテル療法):カシリビマブとイムデビマブの2種類の中和抗体が入っている
先生からのひとこと
新型コロナウイルスの厄介な点は、本人が感染すると症状が強く死の危険性がある上、周囲の人にも様々な影響を及ぼします。
こどもの感染源は同居家族の方が多いため、お子さんに感染させないように、また小さいお子さんを自宅に置いて両親が入院しなければならないなどの事態を避けるためにも保護者の方はワクチン接種をしましょう。
幸いこどものコロナ感染は無症状~軽症が多くワクチン接種の緊急性は低いですが、感染すると入試が受けられない、周囲の友人に迷惑をかける、いじめや差別をうける、両親の仕事に影響する、将来大人になってかかると重症化する等の不利益な観点からもワクチンはできる時に接種させておくのが望ましいと思います。