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診療のこと

2023.03.14

鼻汁吸引の効果とは?!

幼児であるわが子がいつも鼻水を垂らしていてグズグズしていると何とか吸ってあげたくなりますよね。では、鼻水吸いって医学的にはどれほどの効果があるのでしょうか?

1.鼻汁吸引ってどうやってするの?

鼻の奥にたまった鼻水を吸引器で吸い取る処置のことです。医療機関での鼻汁吸引はビニールのチューブ(カテーテル)を咽頭鼻部後壁まで挿入し陰圧で吸引します。家庭用の吸引器は鼻の穴の手前までしか入らない構造になっており、奥の鼻水までは十分に吸い出せません。

 

(▼左:家庭用吸引器メルシ―ポット、▼右:医療用吸引器ミニックW-Ⅱ)

メルシーポット医療用吸引器ミニックW-Ⅱ

鼻汁吸引の効果

かぜや花粉症などで鼻水を吸引しても、次々に鼻水は産生されて出てくるため効果は一時的です。例えるなら、水道の蛇口から漏れてくる水を一生懸命に吸い取ったところで、吸っている間は床が水で濡れることはありませんが、やめると床が濡れて水浸しになります。だからといって、1日中吸い続けるわけにもいきません。結局、水道の蛇口をしめない限りきりがないのです。その蛇口をしめる働きをするのが鼻水止めの薬=抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)です。急性副鼻腔炎の治療ガイドラインでも鼻汁吸引は医学的な根拠に乏しいがやることは悪くない、すなわち効果があるかどうかは証明されていないとされています。積極的な鼻汁吸引は不要としている文献もあります。

 

3.鼻汁吸引のタイミング

鼻汁吸引はやる必要はないのでしょうか。基本的にする必要はないと思われますが、夜間に鼻水が多くて眠れない、ミルクが飲みにくいといった場合には1日2~3回程度なら適度に吸引して、睡眠や授乳をしやすくしてあげるのがよいかもしれません。

 

4.鼻汁吸引の弊害

鼻汁吸引をくり返すと、鼻の粘膜を傷つけたり鼻血の原因にもなります。また処置による刺激がくしゃみや鼻水をさらに誘発してしまうこともあります。吸引される子どもにとって、毎日のように鼻汁吸引することで「鼻吸いは痛くて気持ち悪いもの」という印象がついてしまうと恐怖感を覚え、泣いて嫌がるようになり子どもの心理的負担が大きくなるかもしれません。

 

5.鼻水の対処法

無理やりや過度に鼻汁吸引をするのではなく、鼻のかみ方を教えてあげ、できない年齢の子どもには鼻の下が荒れないように出てきた鼻水を適宜ウェットティッシュや濡れたタオルでやさしくふき取ってあげると良いでしょう。根本的に鼻水を止めるには、医療機関で処方された鼻水の飲み薬を飲ませるのが症状軽減への近道なのです。

 

<まとめ>

鼻汁吸引は基本的に行う必要はありません。鼻汁吸引を行うタイミングは子どもがしんどそうな時に1日2~3回と回数を決めて行いましょう。イメージとしては解熱剤の使い方と似ています。すなわち一生懸命行っても病気が早く治るわけではないですが、一時的には楽になり授乳したり眠りやすくなる程度の効果はあると言えます。

 

★何はともあれ当院で鼻汁吸引をご希望の方は、診察時に気軽にお声がけくださいね。

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