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2024.08.16
溶連菌の疑問アレこれ?!
A群溶連菌(溶血性連鎖球菌)はノドに感染して咽頭炎や扁桃炎を起こす、いわゆる〝ノドのかぜ〟の一般的な原因の一つです。抗菌薬を飲んで24時間で感染力がなくなるほど弱い細菌です。
今回は溶連菌で受診する際に感じる疑問点についてお話しします。
〔コンテンツ〕
- 溶連菌感染症の症状は?
- 検査のタイミングは?
- どんな治療をするの?
- 溶連菌感染症がきっかけとなる病気は?
- 劇症型溶連菌感染症:STSS(人食いバクテリア)とは?
- 学校へはいつから行っていいの?
1.溶連菌感染症の症状は?
典型的な溶連菌感染症の症状は以下のものが代表的です。
①38~39℃台の発熱
②ノドの痛み・扁桃腺が腫れて白い膿がつく
③舌がブツブツになる(イチゴ舌)、
④体や手足の発疹
※咳や鼻水が出ないというのも特徴であるため、咳や鼻水を伴う場合は別の感染症の可能性が高いです。
2.検査のタイミングは?
溶連菌は、ノドを綿棒でこすりとる迅速検査キットで診断することが日常的に多いです。約15分前後で結果がわかります。
では、どういったときに検査を受ければよいのでしょうか?
基本的には上記①発熱に加えて、他②~④のうち1つ以上の症状が認められれば検査しても良いでしょう。但し、咳や鼻水を伴う場合は溶連菌感染症の可能性は低いため検査は必要ありません。
当然ながら、無症状や〝保育園で流行っている〟〝兄弟が感染した〟だけの理由で検査を受ける必要もありません。検査は発熱を含む症状が出てから受けましょう。
3.どんな治療をするの?
基本的には、抗菌薬の内服薬を10日間飲みます。10日間という長い期間、薬を飲んで除菌する目的は、主に後述する溶連菌感染をきっかけに発症する病気を予防するためです。決して溶連菌が強い細菌であるという意味ではありません。
但し、無症状や無熱で検査して、たまたまみつかった溶連菌に関しては治療する必要性はありません。
4.溶連菌感染症がきっかけになる病気とは?
⑴リウマチ熱:発熱、関節痛、心内膜炎、不整脈、発疹などを認めます。長期間、アスピリンの内服が必要になります。
⑵急性糸球体腎炎:血尿(コーラ色の尿)、尿量減少、浮腫、高血圧を認めます。対症療法で約1か月以内に治ります。
⑶IgA血管炎:下肢を中心に出血斑(紫斑)、激しい腹痛・血便、関節痛、血尿・蛋白尿(腎炎)などを来たします。前3者の症状は2週間ほどで自然治癒しますが、腎炎を発症すると、数か月以上の内服治療を要することもあります。
⑷その他:肺炎、髄膜炎、中耳炎、関節炎などがありますが稀です。
5.劇症型溶連菌感染症:STSS(人食いバクテリア)とは?
定期的にテレビなどの報道でお茶の間をにぎわす感染症です。発熱、手足の痛みや腫れ、血圧低下から始まり、組織が壊死し、呼吸不全、肝不全、腎不全などの多臓器不全を来たし、場合によっては数時間で全身状態悪化・死亡する可能性のある病気です。
2022年以降、年々増加傾向にありますが、日本人口1億2400万人あたり年間1060人(2024年7月の時点)の報告例がありますが、発症率は0.000854%と極めて稀な病気であるため、必要以上に怖がる必要はありません。
6.学校へはいつから行っていいの?
溶連菌は抗菌薬を飲んで24時間がたつと感染力がほぼなくなるため、服用後24時間以上たって体調がよければ登園・登校してかまいません(発症/診断当日と翌日の2日間は出席停止)。
登園・登校許可証は必ずしも必要ではありませんが、保育園・幼稚園が施設の方針として求めてきた場合は必要となります。
〔まとめ〕
溶連菌は弱い細菌で自然治癒もあります。抗菌薬内服で容易に除菌できますが、後発疾患予防のため10日間と長めの内服が必要になり、お子さんにとって負担になります。必要以上に心配して不必要な検査や治療をお子さんに課さないよう、保護者の方はよくよく考えた上で受診させましょう。登園許可証は保育園が必要とした場合にのみ必要です。