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季節のこと

2022.11.04

「ヒトメタニューモウイルス」ってなに?

ヒトメタニューモウイルス

木々の葉が紅色に色付いてすっかり秋めいてきて、朝晩の冷え込みが身に染みる季節になってきました。
茨木市の一部の保育園や幼稚園では“ヒトメタニューモウイルス”による風邪が流行っているようです。5歳以下の乳幼児のお子さんをおもちのお母さんには、あまり聞きなれない方もいるかもしれませんね。
“ヒトメタニューモウイルス”って名前も長くて覚えにくく、かみそうになる名前ですよね(笑)

■どんなウイルスなの?

ヒトメタニューモウイルス(human metapneumovirus:hMPV)は、インフルエンザウイルスやRSウイルスに次いで多い、呼吸器感染症(いわゆる、風邪)の原因のウイルスの1つです。

子どもの熱

感染すると、発熱や咳、鼻水といった風邪の症状を起こします。RSウイルスと似ており、3歳未満の小さいお子さんではぜーぜー(喘鳴)や息が苦しくなったり、咳と鼻水がひどく夜も眠れないといった喘息のような症状をきたし重症化することもあります。

子どもの風邪

一方、小学生以上のお子さんや大人がかかった場合は、軽い咳と鼻水が数日出るだけのただの風邪で終わってしまうことが多いです。
感染力はとても強く、咳でとんだ唾液や痰(飛沫感染)やウイルスのついた手指を介して体内に入る(接触感染)と感染します。
感染後の潜伏期間は4~6日間くらい。咳は1週間程度、発熱は4~5日程度続くことが多いようです。
肺炎球菌やb型インフルエンザ桿菌などの細菌と同時に感染(混合感染)すると、発熱が1週間以上長引いたり、肺炎や中耳炎を起こすこともあります。一度感染しても生涯免疫がつくわけではないので、毎年くり返し感染します。ただし、年齢が上がるにつれて徐々に抵抗力がついて、症状は軽くなる傾向があります。

 

■どうやって診断するの?

検査キット

診察所見だけでは、診断することはできませんが、肺の聴診で喘息のような音が聞こえたり酸素の値(酸素飽和度)が94%未満と低い場合にはRSウイルスやヒトメタニューモウイルスを疑うきっかけになります。
医療機関では鼻から綿棒で取った検体(鼻咽頭ぬぐい液)から迅速検査キットで診断できますが、クリニックによってはRSウイルスの検査キットほど常備していない施設もあります。
しかし、ヒトメタニューモウイルスと診断がついたからといって、特効薬があるわけではないため調べる意義はそれほどないともいえます。

 

■どんな治療をするの?

吸入ヒトメタニューモウイルスをやっつける特別なくすりはありません。
したがって、咳や鼻水など症状に対する治療(対症療法)を行いながら、自然に治るのを待つことが基本になります。乳幼児では、症状の重い場合は喘息改善薬やステロイド、気管支拡張薬、吸入などの気管支喘息に準じた治療を行うこともしばしばあります。
クリニックでの治療でも改善がない場合は入院治療を要する場合もあります。
夜間も眠れないほど咳や呼吸困難、咳き込んで吐く、高熱で飲んだり食べたりができなくなるなどの症状がある場合には早めに医療機関を受診して下さい。
解熱して48時間を経過し、咳がひどくなく元気であれば登園可能です。

 

■“ヒトメタニューモウイルス”のまとめ

  • よくみられる子どものかぜの原因ウイルスの1つ。
  • 3歳未満のお子さんは重症化することがありますが、RSウイルスほどではありません。
  • 年齢が上がるほど症状が軽くなります。
  • 治療は症状に対する治療のみで、特効薬はありません。
  • 「眠る」「飲む」「食べる」「おしっこをする」ことができなくなるなら医療機関を受診してください
  • だいじなのは“ヒトメタニューモウイルス”と診断することではなく、上記の日常生活の基本的なことができているか、症状がどれだけ続くかということです。

 

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