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2023.02.23
スギ・ダニ減感作療法
1.減感作療法(アレルゲン免疫療法)とは?
アレルゲン免疫療法とは、病因アレルゲンを投与していくことにより、アレルゲンに曝露された場合に引き起こされる関連症状を緩和する治療法であり、アレルギー疾患の自然経過を改善させることが可能な治療法です。しかし一方で、治療期間は長期(3~5年間)にわたる、対症療法のように即効性を期待して行うものではないといった特徴も持ち合わせています。アレルギー性鼻炎を対象とした舌下投与によるアレルゲン免疫療法(舌下免疫療法)では、 症状の改善、対症療法である薬剤の使用量の減少などが期待されます。また、副作用として投与開始初期に投与部位(口腔内)に関連したアレルギー症状の発現が多く、アナフィラキシー等が発現する可能性もあります。
2.減感作療法の対象となる人は?
・スギ花粉症の方
・ダニ抗原によるアレルギー性鼻炎の方
・小児では錠剤を舌の下で1分以上保持できる5歳以上のお子さん
3.治療を受けられない人は?
・治療薬(シダキュア、ミティキュア)の投与によりショックを起こしたことのある方
・重症の気管支喘息の方
・自己免疫疾患、免疫不全症、悪性腫瘍などの免疫系に影響のある全身性疾患の方
・全身性ステロイド薬を投与されている方
・妊婦の方
・5歳未満の乳幼児
4.どんな副作用があるの?
【主な副作用】
・口の中の腫れ・かゆみ・不快感・違和感
・唇の腫れ
・咽喉の刺激感・不快感・違和感
・耳のかゆみ 等
【重大な副作用(頻度不明)】
・ショック(血圧が低下し、意識がなくなる状態)
・アナフィラキシー(皮膚・粘膜症状に加えて、呼吸器症状、消化器症状、循環器症状など複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応)
5.治療効果と治療成績は?
治療開始して約6ヵ月頃から治療効果が表れてきます。約3~5年継続すると更に効果的です。
治療を受けた方の10%:ほぼ完治に近い状態、20%:症状がほぼない状態、30%:薬剤使用量の減量が可能、20%:症状がやや軽減、20%:無効となっています。すなわち、およそ8割の方に改善効果が認められます。
6.治療の流れ
⑴ 検査
血液検査で症状の原因アレルゲンがスギまたはダニであることを確認する必要があります。アレルギー検査の結果が出るには約1週間かかります。
⑵ 検査結果・治療の説明
1週間後に再診いただき、検査結果の説明をします。治療対象となる方には、治療内容を説明の上、治療意思の確認を行います。
以下のポイントについて行う意思があり、実行できる方は治療を行うことができます。
・長期間に治療を継続できる
・毎日継続できる
・少なくとも1ヵ月に1度、受診することができる
・アナフィラキシー等の副作用が起きる可能性が理解でき、副作用等の対処法が理解できる
⑶ 治療開始
スギに対する減感作療法について、スギ花粉飛散期はスギ花粉アレルゲンに対する患者の過敏性が高まっている場合が多いため、スギ花粉非飛散期(6月~12月)に治療を開始します。
治療意思があり、治療に同意いただいた方には治療薬(スギ:シダキュア、ダニ:ミティキュア)を処方します。当ビル1階の「プラザ薬局JR総持寺店」へ治療薬を受け取りに行っていただき再度当院へお戻りください。
⑷ 初回投与~投与開始後1週間
医師の監督のもと舌下免疫療法薬の初回投与を行います。投与後少なくとも30分 間は院内で安静な状態に保ち、副作用の有無について経過観察します。
初回投与以降は自宅で服用し治療を継続します。
【初回投与量】
・スギ花粉症:「シダキュア」スギ花粉舌下錠2,000JAUを1日1回 1錠
・ダニアレルギー性鼻炎:「ミティキュア」ダニ舌下錠3,300JAUを1日1回1錠
【服用上の注意】
- アナフィラキシー等が発現した場合の対処等を考慮し、家族のいる場所や日中の服用が望ましい
- 小児等は、保護者等の管理下で服用することが望ましい
- 舌下に置くとすぐ唾液で溶けてなくなるが、すぐに飲み込まず、1分間保持する
- 服用後5分間は、うがいや飲食を控える。
- 服用前、及び服用後2時間は激しい運動、アルコール摂取、入浴等を避けること
⑸ 投与2週目以降
1週間後に再診していただき、副作用の確認、診察、治療薬の増量を行います。
【2週目以降の投与量】
・スギ花粉症:「シダキュア」スギ花粉舌下錠5,000JAUを1日1回 1錠
・ダニアレルギー性鼻炎:「ミティキュア」ダニ舌下錠10,000JAUを1日1回1錠
《注意事項》
- 舌下免疫療法薬服用中もアレルゲンの回避は必要です。日常生活におけるアレルゲン回避指導も行ってください。
- 必要に応じ、抗ヒスタミン薬等のアレルギー治療薬の投与で症状軽減を図るようにしてください。
- 服用を長期に中断した後再開する場合、患者さん(患者さんが小児等の場合には、その保護者等)の自己判断ではなく、医師と相談の上、再開すること。
- 自己判断で服用を中止せず、必ず医師に相談すること。
シダキュアの治療スケジュール
ミティキュアの治療スケジュール